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家の基礎は30年で寿命?(住宅ローンは35年なのに?)
日本の一般的な住宅の寿命は30年とされています。なぜでしょうか?
その寿命が短い主原因のひとつに基礎の構造があります。不思議なことに、一般的な住宅の基礎はおよそ30年で寿命となるような設計および施工がなされています。・・・これは困ったものですね。
どんなに断熱やデザインなどで家づくりにこだわっていても、「家を支える基礎」がしっかりとしていないと、まさに「砂上の楼閣」・・・低燃費住宅では、基礎には特にこだわっており、力強く、そして長持ちさせる為に様々な工夫を凝らしています。
あえて断言させていただきますが、基礎は出来るだけ長持ちするように、そして力強い方が良いです。なぜならば基礎は後で作り直すのが非常に難しい部位だからです。
もし、住宅を長持ちさせたいと考えた場合、基礎設計時に幾つかのポイントを抑えておく必要がありますので詳しく解説いたします。
鉄筋コンクリートの寿命
一言でいうと、鉄筋コンクリートの寿命は鉄筋が錆びるまでです。
少し技術的なお話となりますが、基礎はコンクリートと鉄筋で造られています。コンクリートは古くは古代ローマ時代より使われており(パンテオン神殿など)、当時のコンクリート建築が現代にも存在する為、半永久的にもつ素材です。一方鉄筋は錆びてしまうため、耐久性は保存状態によって変化します。つまり、鉄筋コンクリートの寿命とは鉄筋が錆びるまでの期間ということになります。コンクリートはアルカリ性なので、コンクリートが中性化するまでは中の鉄筋は錆びません。ということで、コンクリートの中性化領域が鉄筋に到達し、約20%が腐食した状態が鉄筋コンクリートの寿命と考えられています。
鉄筋を錆びにくくするポイントは、主に5つあります。
- 密度を高める
- 厚みを増す
- 正しく施工
- 正しく養生
- 表面をコーティング
低燃費住宅ではこの5つ全てにひと手間かける事で、基礎の寿命を飛躍的に高めていますので、それぞれの詳細を見てみましょう。
1.密度を高める
コンクリートは、骨材同士をセメントペーストで結合したものです。したがって、 コンクリート強度はセメントペーストの接着力、つまり水セメント比(水とセメントの割合)によって決まります。水セメント 比が小さいほど(セメント割合の多いほど)、高濃度のセメントとなり、コンクリート強度は大きくなります。
一般的な戸建て住宅では、耐久設計基準強度は18N/mm2、つまり基礎仕様からして設計時点で30年建て替えを想定したものとなっています。つまり、30年で建て替えられているのは、そもそも設計者が耐久性は30年で設計していることが影響していたのです。(私には信じられませんが・・・)
低燃費住宅では設計基準強度30N/mm2、水セメント比50%未満の長期耐久用のコンクリートを標準で使用しています。
強度30N/mm2とはどのくらいの強さか?
強度30N/mm2とは、1mm×1mmの面積で3kgの力に耐えられるという意味です。mmとか言ってもアレなので、m単位に直すと3000トン/m2です。実際は安全率をみてこの1/3が許容圧縮強度となりますが、1m2で1000トンにも耐えられる強度です。モノでいえば高層ビルの柱を造るレベルで基礎を作っています。
なお、コンクリートの強度性能は一般に次のとおりです。(理系のお父さん用)ご覧のとおり、圧縮強度を基準として決るため、圧縮強度がコンクリート強度として認識されています。
圧縮強度:設計基準強度(N/mm2)
引張り強度:圧縮強度の1/10~1/13
曲げ強度:圧縮強度の1/5~1/7
せん断強度:圧縮強度の1/4~1/6
「呼び強度」と「設計基準強度」
専門的になりますが、コンクリート強度には、「呼び強度」と「設計基準強度」の2種類があります。コンクリートは生成したての状態ではドロドロ。その後、基礎の型枠に打設後、水和反応(コンクリートと水が化学変化を起こして硬化)により時間の経過とともに堅くなって立派なコンクリートになります。そのため、コンクリートの強度はどの時点での強度を指すのかが不明確です。そこで建築で定義する強度は、4週強度と言い、コンクリートが打ち込まれてから28日経過した時の強度が「呼び強度」です。
そして、設計上確実に必要な強度である設計基準強度は、安全率をかけて呼び強度「-3」で設計します。(日本建築学会基準書)
2.「かぶり厚」を増す
基礎の耐久性はコンクリートのかぶり厚が大きく影響します。
かぶり厚とは鉄筋表面とコンクリート表面との最短距離であり、かぶり厚がぶ厚いほど、コンクリートの中性化の影響を受けにくくなります。
先ほども出した鉄筋の腐食確率のイメージグラフですが、赤い部分が鉄筋の腐食の確立があるゾーンです。この鉄筋の腐食可能性のある面積を減らす為にはY軸である鉄筋の「かぶり厚」を増やす、又は中世加速度を遅らせる必要があります。つまり、かぶり厚を増やすことは、基礎を長持ちさせるうえで非常に有効な方法と言えます。
また、万が一のコンクリートのわれ等のリスクにも、かぶり厚がぶ厚いほど低くなります。そして万が一基礎が損傷した場合の補修もかぶり厚が大きいほどにやりやすくなります。
ということで、かぶり厚を大きくすることは、基礎の耐久性に大きく影響するポイントとなります。
低燃費住宅では、基礎立上り17㎝で鉄筋のかぶり厚最薄部を標準+1cmの4cm以上(平均5〜6cm)、底盤20cmと一般的な住宅よりも大幅にぶ厚くしています。
3.正しく施工
空気量 コンクリート中の空気量が多くなるほど強度は低下します。したがって、施工においてコンクリート中の空気量をできるだけ少なくなるようバイブレータ(写真左)で入念に締固めを行うことが重要です。そして、コンクリートはよび強度が上がる程に固くいために施工難易度が上がります。特に強度の高いコンクリートはバイブレータをしっかりかけないと空洞が出来やすく、現場の施工能力が低いとジャンカ(空洞:写真右)が増えて、強度が低下してしまいます。
また、打設した時期の外気温も基礎の強度には大きく影響を及ぼします。セメントの水和反応は温度が高いほど活発となり、-10℃で水和反応が停止してしまいます。 したがって、温度が高いほ どコンクリート強度は大きくなります。(85℃以上となると結晶が粗くなるため強度が著しく低下するため高すぎるのもNG)そのため、打設した時期によって呼び強度から補正値を差っ引いた値を設計強度とします。なお、夏は温度が高いのですが水分も蒸発しやすいために、逆に乾燥しすぎるので、最も厳しい補正係数は6N/mm2となっています。
低燃費住宅では、呼び強度の高い施行難易度の高いコンクリートを使って居ますが、腕の良い基礎職人さんが丁寧に造り上げます。
4.打設後の適切な養生
コンクリート強度は、水とセメントの水和反応によって時間をかけて発現します。水が供給され続けば水和反応は進行し、時間経過とともに強度は増大していきます。しかし、 コンクリート中の水が乾燥で失われてしまうと水和反応は停止してしまう為、湿潤養生といって基礎から水分が蒸発しないように保護する必要があります。
ザックリいえば、基礎は乾かしてしまうと強度が低下しますので乾かしちゃダメです。そして、温度が低くても強度が低下しますので保温しないとダメです。
そのため、コンクリート打設後の断熱と湿潤状態を保つための湿潤養生期間と方法が基礎の耐久性を決める重要なポイントとなります。特に打設後の7日間が最も強度形成される速度が速い期間ですので、7日間の湿潤養生期間の管理方法が最重要となります。
低燃費住宅では、常に水を散水して基礎を水没させる、「湛水養生」という基礎養生を行い、コンクリートの水和反応を促進させています。
湿潤養生後の安静にしておく養生期間
また、水和反応が十分に進んでいない初期のコンクリートは強度が非常に貧弱です。この初期の貧弱なコンクリートに木工事などで荷重をかけてしまうと、強度が十分に出ていない為に内部が損傷してしまい、基礎の強度が著しく低下してしまいます。そのため、特に打設後最低でも1ヶ月程度は基礎に荷重をかけずに安静にしておく必要があります。いつまで安静にしておく必要があるかは、コンクリート強度の確認方法は打設時に作成した円筒形のコンクリート試験体を28日後に破壊することで確認します。現場の基礎コンクリートは気温や乾湿などの養生条件の 影響を受けるため、水没させて管理するテストピースに比べ、強度発現が遅くなるため、材齢3か月の現場で打設した基礎コンクリート強度は、材齢28日におけるテストピース強度とほぼ等価になります。
ところが、コストダウン手法として手間と工期を圧縮させる家づくりでは、基礎打設後翌日には湿潤養生もせずに空中にさらし、最低養生期間もおかずにわずか数日で木工事を進めてしまうケースが多く見受けらえます。章冒頭のグラフをご覧いただけるとお分かりかと思いますが、あれでは基礎の耐久性は本来の4割も出ません。まさに30年持たない家を造る愚行と言えます。(おそらくコンクリートがどのようにして固まるか、さらには基礎の耐久性の原理原則すら知らないのでしょう・・・)大手ハウスメーカーはちゃんと養生期間を置いて基礎を作っていますので、基礎の養生期間を見ると、一発でそのハウスメーカーの品質管理レベルが分かります。
低燃費住宅では28日後に圧縮強度試験を行い、しっかりと強度が出ていることを確認してから、木工事を行っています。
弊社の基礎工事のデメリットは、養生期間を長くかけるので、他社よりもどうしても工期が長くなります。(ここは短工期で端折っては絶対にダメなところなので手を抜けません!)
※図引用:ZENNAMAコンクリートマニュアル(抜粋)コンクリートパンフレット第50号、セメント協会、1956年より
5.表面をコーティング
なぜ基礎表面をコーティングするかというと、コンクリートのアルカリ成分は、空気中の炭酸ガス等の作用により絶えず浸食されています。そのため、この中性化現象の要因である水、炭酸ガス、酸化性ガス等の進入を「浸透性無機質反応型改良剤」というコンクリート専用の特殊コーティング剤で形成された改質層を形成することで、基礎の劣化を長期的に抑制することが出来ます。また、内部の水分も漏れにくくなる為、打設後の数年における水和反応を向上させる効果も期待できます。
この液体ガラスは長期耐久性が必要な高速道路や高架橋、塩害の激しいテトラポット等に採用されているコンクリート保護のための特殊技術です。弊社ではそれを基礎を長持ちさせるために採用しています。
低燃費住宅では、型枠解体後に液体ガラスで、基礎をコーティングします。
基礎コンクリートの耐久性を伸ばす為に、5つのこだわりを標準仕様に
- 密度を高める
- 厚みを増す
- 正しく施工
- 正しく養生
- 表面をコーティング
低燃費住宅ではこの5つ全てをひと手間かける事で、基礎の寿命を飛躍的に高めています。
長持ちする家づくり、これこそが持続可能性を高めるために最も重要なことです。
参考文献